東鶴酒造株式会社

麹製造の工程改善で 生産能力と酒質、作業効率の向上に

 山々に囲まれた自然豊かな多久市で、江戸時代末期の1830(文政13)年に創業。5代目の1989(平成元)年に一旦休業しましたが、6代目が蔵元杜氏となり2009(平成21)年に再開しました。
 当酒蔵を代表する銘柄は酒米「美山錦」を使った「純米酒 東鶴」。米のうま味を引き出し、後味の切れの良さを追求した逸品です。また地元産酒米「山田錦」を低温でじっくり発酵させた「純米吟醸酒 東鶴」は上品な香りとうま味が堪能できます。
 佐賀大学とのコラボ商品や地元多久の市民活動を支援する基金の創設プロジェクトにも参画し、独自ブランドの製造販売にも携わっています。



代表取締役 野中 保斉



本事業への取り組みの経緯

 日本酒は今、嗜好性の高い清酒として認知され、当酒蔵のお酒も割烹料理店やフレンチレストランなどでもラインアップされるようになりました。日本酒ブームは世界に広がっていて、当酒蔵の商品もシンガポールや台湾に輸出しています。今後はさらに東アジアを中心に流通を拡大して収益性を高めたいと思っています。そのためには生産能力を上げる必要があります。というのも当酒蔵の装置は小さいため、1回に造る麹量が工程上のボトルネックでした。麹を造る大掛かりな装置「麹製造恒温恒湿度装置」が昭和初期のもので、酒質の管理面で良好とはいえません。
 酒蔵の1階にあったこの装置は、2019(令和元)年8月の九州北部豪雨で浸水した時に打撃を受けました。気候変動による被災リスクを軽減するためにも新しい機械を導入し、2階に設置し直すという決断をしました。


実施内容(取り組みの詳細)

 導入した装置は適正な室温と湿度を保つ「麹製造恒温恒湿装置」と麹を乾燥させる「出麹温風装置」です。
 昔から「一に麹」と言われるほど、麹はおいしい酒造りの肝です。今まで使用していた装置は、温度、湿度ともにセンサーの感度が弱く、装置自体の保温性と保湿性が劣化していたため、麹菌の培養が計画通りにいきませんでした。今回導入した装置はグラスウール素材を使用しているため保湿性が高く、調湿に影響する扉は防熱性が高い扉とし、最適な室温、湿度に制御、維持管理することが可能になりました。
 また衛生管理の基本として、適正な麹菌の状態になったら雑菌が繁殖しないように素早く乾燥させる必要があります。これまでは扇風機を使っていましたが、出麹温風機の導入で素早く乾燥できるようになりました。




取り組み成果・波及効果

 麹菌を培養する時間はこれまで48時間かかり、夜中も品質管理のため目が離せず、手間がかかっていました。これを週4回ほど行っていましたが、機械導入後は週2回で済むようになり、2日間で最大60㎏だった製麹量は、3倍の180㎏に増量しました。年間の製造可能数量は、一升瓶換算で2万本から6万本と3倍に増えました。
 また出麹温風装置導入後は、麹の保存性が良くなり、作り置きも可能になりました。おかげで当蔵元が求めている麹ができ、良質なおいしいお酒が安定して造れるようになりました。
 機械導入で作業効率が上がり、働き方改革や人件費削減にもつながりました。





もっと知りたい!
事業所の魅力をさらに深掘り!

Q:御社について教えてください

A:いろんなお酒の味を楽しみたい国内外の方のために、いろんなチャレンジをしています。


Q:御社の経営理念は

A:家族経営の蔵元です。家族の絆を大切に、作り手の顔が見えるお酒造りを続けています。


Q:アピールしたいことは

A:日本酒が苦手な方も、日本酒を飲んだことがない方も、おいしいと言ってもらえるようなお酒がたくさんあります。


Q:興味をひかれたお客さまにひと言

A:日本酒は、ゆっくりと味わいながら飲むものだと思っています。おしゃれなグラスに入れたりして、雰囲気も楽しんでほしいですね。


今後の展望・活動予定

 新しい機械を2階に設置したことで水害による被災リスクは低くなり、安定的な日本酒の提供が可能になりました。
 今、日本酒は、韓国をはじめ東アジアへの進出が進んでいます。年々、国際的な衛生管理基準「HACCP」が厳しくなっていますが、海外への需要にも応えられるようにしていきたいと思っています。
 一般的には、日本酒は飲みにくいというイメージがまだ残っていると感じています。それを払拭するようなお酒を造ると同時に、ボトルも手に取りやすいデザインにするなど、日本酒に対するハードルを下げる努力をしていきたいです。
 多久市に根付いた酒蔵ですから、地域資源として人口増加や観光振興にも寄与できるようになりたいと思います。



INFORMATION




東鶴酒造株式会社

代表取締役:野中 保斉

住 所:佐賀県多久市東多久町大字別府3625番地1

連絡先:TEL0952-76-2421/FAX0952-76-2432

U R L : 東鶴酒造株式会社のwebサイトはこちら

資本金:1,000万円

設 立:昭和31年10月

従業員:2人

Saga Monodukuri /飲料・たばこ・飼料製造業
平成30年度補正/ものづくり技術・一般型

この記事の印刷紙面をみる(459KB; PDFファイル)


ページトップへ

佐賀県中小企業団体中央会

〒840-0826 佐賀市白山二丁目1番12号 佐賀商工ビル6階

TEL:0952-23-4598 FAX:0952-29-6580 E-mail : staff@aile.or.jp