矢野酒造株式会社

アジア市場開拓に向けて新型自動醪搾機を導入しフルーティーで上質な純米吟醸酒を開発

 多良山系の清水と良質な米に恵まれた鹿島市は、江戸時代から酒造りが盛んで、今も県内有数の酒どころです。 矢野酒造は、そんな鹿島市にある小さな酒蔵です。創業は1796(寛政8)年で、代表取締役・矢野元英は9代目です。 杜氏と蔵人とともにできる限り手づくりにこだわり、銘柄「肥前蔵心」や「竹の園」といった上質な日本酒の製造と販売を行っています。
 当酒蔵の強みは、顧客のニーズに合わせて小ロット生産が可能なこと。日本酒を通じて、人と人がつながり、日常に豊かさをお届けするお手伝いができればと日々努めています。



代表取締役 矢野 元英



本事業への取り組みの経緯

 当酒蔵の主な販売市場である佐賀県は、少子高齢化と人口減少の影響で、今後市場の縮小が予測されます。そこで海外に目を向け、魅力ある販売市場として人口増加と生活水準の向上が見込まれるアジア圏に着目。当酒蔵が今後も継続して成長するための鍵と捉えました。
 アジア圏の市場ニーズに応えるためには、「米のうま味を最大限にいかした甘くフルーティーな味わい」の最高級純米吟醸酒の製造が不可欠です。目指す日本酒を造るためには、上質な原材料のほか、製造技術の向上が品質に大きく左右します。そこで手づくりにこだわりつつも、「薮田式自動醪搾機」の導入を決めました。


実施内容(取り組みの詳細)

 これまでは熟成した「醪」を清酒と酒粕に分離する上槽工程で、旧式圧搾機を使用していました。
 全上槽工程には20時間以上かかり、その間に進む酸化による香味の劣化をどう防ぐかが課題となっていました。また、圧搾機には70枚の圧搾パネルと同数の濾布(濾過する布)が装着されていますが、圧搾機の洗浄時にこれを外すことができないため、時に酸臭が発生します。その対策として、活性炭素を使用したろ過処理を何度も行う必要があり、香りやうま味を損なう原因になっていました。
 これらの課題解決のため、圧搾機を新型の自動醪搾機に替えたところ、搾り終わるまでの時間は12時間に短縮。また濾布をホック脱着式に変更し、酸臭の原因をなくしました。
 その結果、香味の劣化が抑えられ、米のうま味を最大限にいかした純米酒の製造が可能になりました。




取り組み成果・波及効果

 純米酒など最高級の酒造りに大切な麹づくりは、半自動機械から熟練の蔵人による手作業に変更。上槽工程を新型の自動醪搾機に替えて搾ったお酒は、酸化臭もなく澄んでいました。以前は搾ったお酒に澱(かす)が残っていたため、濾過する作業が必要でしたが、その工程を丸ごと省くことができました。上槽から瓶詰めまでの工程サイクルが早くなり、品質の良いフレッシュな状態でお酒を提供することができるようになりました。
 海外のバイヤーにも好評です。取引先は従来の4カ国から、中国、香港、韓国、アメリカなど9カ国に広がり、海外市場の売上は1%から8%に上昇しました。
 また作業効率の向上にもつながりました。以前は圧搾機を組み立てるだけで20日間かかっていたのが大幅に短縮され現在は2日間で済み、他の作業にもゆとりができました。特に新酒づくりのある繁忙期でも確実に休みが取れるようになったのは、大きなメリットです。




もっと知りたい!
事業所の魅力をさらに深掘り!

Q:御社について教えてください

A:甘く濃醇なお酒が多い佐賀県の中で当酒蔵は透明感と軽さ、すっきりとした味わいの辛口が多いです。職人が丁寧に手づくりしています。


Q:御社の経営理念は

A:丁寧に手づくりした日本酒「竹の園」「肥前蔵心」を通じて、人と人とがつながり、「和」を生み出すお手伝いをする。


Q:アピールしたいことは

A:佐賀県鹿島市の気候、人、地域に根付く文化を踏襲して、食に合う矢野酒造ならではの地酒も研究しています。


Q:興味をひかれたお客さまにひと言

A:当酒蔵では3年5年と熟成させたお酒も造っています。お燗にしてお食事と合わせれば、豊かな時間を堪能できます。ぜひ試してみてください。


今後の展望・活動予定

 近年、日本酒を好むお客さまが増え、熟成した市場ではよりおいしく、個性的なお酒が求められています。新しい挑戦が必要となる中、新型醪搾機の導入で酒質が向上したばかりでなく、発酵由来のガスを残した口の中で弾けるシャンパンのようなお酒や、濾過して澄んだお酒にあえて濁りを加えるなど新商品開発の選択肢が広がりました。
 海外のお客さまに矢野酒造のお酒を楽しんでほしいと思うと同時に国内にも目を向け、矢野酒造を応援してくれる九州の酒販店を開拓しなくてはと考えています。国内の市場調査と酒販店開拓のためにしっかり営業活動に力を入れ、矢野酒造を選んでもらえるお酒造りに努めたいですね。




INFORMATION




矢野酒造株式会社

代表取締役:矢野 元英

住 所:佐賀県鹿島市大字高津原3903-1

連絡先:TEL0954-63-2008/FAX0954-63-2363

U R L : 矢野酒造株式会社のwebサイトはこちら

資本金:1,000万円

設 立:昭和28年12月

従業員:9人

Saga Monodukuri /飲料・たばこ・飼料製造業
平成30年度補正/ものづくり技術・一般型

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