有限会社 菓心まるいち
1950(昭和25)年、餅と饅頭の製造小売業として創業。現在、本店(佐賀市)と直営店3店舗で製造直売をしています。
和菓子屋にとって“あん”は命です。品質に優れた北海道産の小豆や大手亡豆を使い、50年以上のキャリアを持つ職人が時間をかけて丁寧に作っています。そんなあんを使った朝生菓子などの商品のほか、地産地消にもこだわった佐賀のブランドいちご「いちごさん」や小豆に本葛を使った溶けないアイス「くずまる君」、シャインマスカット大福など多彩な商品を揃えています。
これからも、安心安全な国産原料を使用しおいしさを追求したまるいちの菓子を伝承していきたいと思っています。

代表取締役 市丸 剛

本事業への取り組みの経緯
昨今の製造業は「後継者難」「原材料・人件費高騰」などの課題に直面し厳しい状況にあり、それは和菓子産業界も例外ではありません。
農畜産業振興機構によると、和菓子の生産額ピークは1993年。その後コロナ禍の人流停滞によりギフト需要の減少などが見られました。特に近年では「若者の和菓子離れ」や、コンビニエンスストアや大手菓子専門店の店舗拡大などといった要因により競争が激化。地方和菓子専門店の製品づくり・店づくりにおけるユニークさの追求は急務といえます。
そこで商品戦略を見直し、広域販売戦略の強化を進め、新商品の開発を目標に掲げました。まず、自家製あんのこだわりを継続して付加価値を付けていくために、最先端設備を導入してあん製造の環境整備に力を入れることにしました。

実施内容(取り組みの詳細)
これまでの製あんは、全てが手作業のうえに重労働でした。まず厳選した小豆を傷付かないように優しく手で水洗いしたら、水を入れ火にかけます。沸騰したら冷水をさし、これを小豆の皮が伸びるまで繰り返します。次に渋切り。小豆をざるにあけ清水で洗い流します。そしてまた釜に戻して本煮をします。煮上がったらしばらく蒸らして冷却します。煮えムラがないか確認し、製あん機で小豆をつぶして皮と「ご」(中身)を分離。こした「ご」は、冷水を加えて晒し上澄みを流す作業を2回繰り返し、水抜きをしたら生あんの完成です。この間約3時間。職人1人が張り付いて作業します。
今回、操作盤、豆煮釜、分離機、晒し機の5点が備わった「小型無人化製あんシステム」を導入しました。小豆を機械に入れてタイマーをセットすれば、あとは全自動で生あんが完成します。

取り組み成果・波及効果
重労働で時間もかかるあんづくりでしたが、新しい機械を導入し、あんづくりは約3時間から2時間に。あらかじめスタートタイマーをセットしておけば、翌朝出社したときにはすでに生あんが仕上がっています。また、水の使用量も最大50%削減され、経費削減にも貢献できました。
長年培ってきた職人の技と経験、五感に頼りながらも部分的に機械化を進めることで、職人は本来の技がいきるあん練り業務に集中できるようになりました。その結果、労働生産性の向上、長時間労働の是正にもつながりました。以前は重労働のため後継者となる職人が定着しない不安もありましたが、全自動製あんシステムが構築されたことで、あんづくりの技術を継承するハードルが下がりました。


事業所の魅力をさらに深掘り!
Q:御社について教えてください
A:創業して74年。自家製あんの味にこだわりつつ、時代に合った多彩な商品を製造、直営店で販売しています。
Q:御社の経営理念は
A:おいしいお菓子の製造販売を通して、お客さまに満足を提供し、会社の発展と社員の幸福を築き、社会に貢献することです。
Q:アピールしたいことは
A:人生の節目をもっと幸せな時間にしたい。当社の誇る菓子職人の技は、佐賀に生きる人の想いに寄り添うために70年以上の時をかけ磨いてきました。
Q:興味をひかれたお客さまにひと言
A:自家製あんのレベルはもちろん、素材をいかす技術を300種類以上の菓子を作ることで磨いてきました。完全無添加の飲めるあんこ「餡MMu」や、ジャムのような「あんペースト」といった新感覚の商品もぜひ楽しんでほしいです。
当社は「あんこの可能性を追求する!」というテーマを持っていますが、あんはさまざまな可能性を秘めています。というのも、原料である小豆は食物繊維や鉄分、カリウムなど多くのミネラルを含んでいて、高糖質で低脂質。胃腸への負担も少なく、体の中で素早くエネルギーになってくれます。そこに着目し新商品として開発した完全無添加の飲めるあんこ「餡MMu」ですが、こちらも新しい機器の導入で、より効率的に作ることができるようになりました。運動前のエネルギー補給や小腹がすいたとき、食パンのトッピングにも重宝します。若い世代や新たなお客さまの取り込みにつながればと期待しています。
あんづくりの省力化ができたので、自社農園や体験場、カフェなどを本社に備えて、みんなが集うランドマークのような存在にしていきたいと考えています。

INFORMATION
有限会社 菓心まるいち
代表取締役社長:市丸 剛
住 所:佐賀県佐賀市鍋島町鍋島1224-7
連絡先:TEL0952-33-3901/FAX0952-33-6301
U R L :有限会社 菓心まるいちのwebサイトはこちら
資本金:500万円
設 立:昭和25年
従業員:18人
平成30年度補正/ものづくり技術・一般型