西研グラフィックス株式会社

　1950（昭和25）年に創業し、新聞印刷用輪転機のオーバーホールやメンテナンス事業からスタート。74年にわたり新聞印刷用輪転機とその周辺機器の開発と製造、販売、メンテナンスを行ってきました。当社で給紙装置の開発を成功させたことで、新聞印刷システムの完全内製化を実現し、順調に売り上げを伸ばしてきました。
　2017（平成29）年、長年培ってきた経験と知識で、既に撤退したメーカー製輪転機の片面カラー機から両面カラー機への改装工事を完遂。撤退した他社製品の改装は新聞印刷業界において新時代を切り開くものであり、業界内で大きな話題となりました。

生産統括本部
品質管理課マネージャー
森永 博章

本事業への取り組みの経緯

　国内において新聞の発行部数が減少していることもあり、主要な顧客である新聞社からの新規設備投資が減少しています。さらにペーパーレス化など印刷社業界の構造的な不況によって、既存メーカーの撤退や統合が進んでいます。その中で近年、既存設備の機能強化や長持ちさせるための改修工事を手掛けることが増えてきました。
　他社製の新聞印刷用輪転機の改修工事では、部品の設計図面の入手が困難かつ、存在しても製作に十分な情報がない場合が多くあります。そのため輪転機を長期間停止して部品を取り外し、幅や長さ、カーブの角度などを実際に計って図面化するしかありません。特に測定に正確性が求められる部品については、専用の測定環境のある外部へと持ち込んで測定しなければなりません。
　これらの課題を解決するために、三次元測定と三次元スキャンで図面化が容易にできる複合型三次元測定器を導入しました。

実施内容（取り組みの詳細）

　手作業の場合は輪転機からほとんどの部品を外して測定します。複雑な形状で精度の高さが要求される部品は、三次元測定器や三次元スキャナーを備えた場所まで個別に運んで測定する必要がありました。
　今回導入したのは、一台で三次元測定と三次元スキャンが行え、測定データとスキャンデータを同時に処理できるアーム式複合型三次元測定器です。現場に持ち込めるので、すべての部品を現場で測定でき、また輪転機の部品総数の30％は外さずに測定が可能になりました。部品の輸送コストはゼロになり、輪転機停止期間も短縮。手作業よりも高い測定精度を確保でき、設計までの手間も低減できました。
　導入に当たり、当社のオペレーターの育成のため、メーカーから測定やスキャンで得た情報を図面化するトレーニングを受け、データ処理に関する理論面の指導を九州大学から受けました。

取り組み成果・波及効果

　複合型三次元測定器を用いることで、漏れなくすべての部品のデータを高精度かつこれまでの半分の時間で取得することが可能に。作業工程も30％削減できました。スキャンデータを用いて実物と同じ部品の位置関係をコンピュータ内の仮想空間で再現でき、その結果、工事の品質向上、製造コスト低減（約14％）、輪転機停止期間の大幅短縮を実現することができました。
　新聞発行の制約が軽減するため、新聞社側の改修実施への動機付けとなり得ます。この点は、大規模な改修において圧倒的な競争力になると考えています。
　複合型三次元測定器でできることはたくさんあります。引き続き使い方をもっと研究していきたいと思います。

INFORMATION

西研グラフィックス株式会社

代表取締役：並田 正太

住　所：佐賀県神埼郡吉野ヶ里町吉田135

連絡先：TEL0952-52-8515／FAX0952-52-8516

U R L ：西研グラフィックス株式会社のwebサイトはこちら

資本金：4,500万円

設　立：昭和25年7月

従業員：125人

この記事の印刷紙面をみる(626KB; PDFファイル)