有限会社 井上製麺

半生麺の専用の生産ライン導入で生産性と衛生環境が飛躍的に向上

 約400年の歴史を持ち、小麦のうま味と豊かな香りが特徴の「神埼そうめん」で知られる佐賀県神埼の地で、 1873(明治6)年に創業。以来、約150年にわたって素麺づくり一筋に事業を展開してきました。工場敷地内には「神埼めん工房 百年庵」を開業し、製造、卸、直販、飲食までのすべてを手掛けています。
 1974(昭和49)年にJAS認定工場、また国内外での有機認証を取得し、2012(平成24)年には食品の安全を確保する衛生管理の手法「HACCP」を全国で6番目に取得しました。
 ビタミン類や鉄分、カルシウムが豊富な赤米を麺にした「古代麺」や、オーツブラウンを使用した「低糖麺」など 多彩な製品開発にも力を入れています。



代表取締役 井上 義博



本事業への取り組みの経緯

 近年、即席麺やカップ麺のような、簡便性があり短い調理時間で食べられる麺類が好まれるようになりました。素麺やうどんも短時間でゆであがる半生タイプの麺が主流となり、乾麺の需要は減少傾向にあります。そこで、夏の食材としてのイメージが強い素麺の冬場の需要開拓として開発したのが、鍋の締め専用の「すきしゃぶ麺」です。袋から取り出したらそのまま鍋に入れてすぐに食べられる半生麺で、食塩不使用ながら製造日から常温で90日もの間保存ができます。
 「すきしゃぶ麺」は、原料の選定や最適な水分含有量を6年の試行錯誤の末に導き出し、ゆで時間を3分から20秒へと短縮することに成功しました。しかしながら、既存の乾麺専用の設備で製造していたため、生産性と衛生面での課題が残りました。その解決のために、半生麺専用の生産ラインの導入を決めました。


実施内容(取り組みの詳細)

 まず半生麺専用の生産ラインの装置を選定しました。
 生地づくり、熟成、圧延と切り出し、乾燥までを行う「小型ロール製麺機」、切り出した麺に金属が混入していないか検知する「金属検知器」、切り出し後すぐに包装する「中型横ピロー包装機」、脱酸素の検査と重量をチェックする「金属検出機付ウエイトチェッカー」の4つの機械装置を導入しました。
 従来の生産ラインによる半生麺づくりは、工数が多く人手も要し非効率的でしたが、その時間を一気に短縮することができました。




取り組み成果・波及効果

 これまでは乾麺用大型機械を使って半生麺を製造していましたが、乾燥に必要な時間が乾麺は12時間、半生麺は1時間と大きく違います。そのため乾燥工程の途中に手作業で麺を取り出す必要があり、工数を増やす原因の一つになっていました。またその後の包装、金属検出、重量チェックもすべて手作業で行っていました。
 新しい装置では、麺の製造から切り出し、賞味期限やロット番号を自動的に印字して包装、金属検出、重量チェックまで自動で行えます。これまで8工程だったものが4工程に減り、効率良く短時間で作業が進むようになりました。結果、生産性は3倍に向上。従来では、2時間ほどかかる包装工程に従業員5人が必要でしたが、新設備導入後は終日2人で対応が可能です。加えて、手作業による工程が削減されたことで衛生面での生産環境も格段に改善されました。
 また、生産性の向上により販売価格を抑えることが可能になったことも大きな利点です。





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事業所の魅力をさらに深掘り!

Q:御社について教えてください

A:佐賀県の真崎照郷の発明による、世界初の機械動力式製麺機をいち早く導入した機械式製麺の元祖の一社です。


Q:御社の経営理念は

A:伝統の製法に新しいテクノロジーを巧みに取り込み、極上の麺を作り続ける。


Q:アピールしたいことは

A:井上製麺は、佐賀の山林を守ることで自社から発生した二酸化炭素を吸収するカーボンオフセット済みの商品を販売しています。全国乾麺協同組合連合会所属の業者の中では当社が初めてです。


Q:興味をひかれたお客さまにひと言

A:当社は、1200以上の歴史を誇る仁比山神社(神埼市)のお膝下で素麺を作り続けてきました。「神そうめん」「神うどん」などの神シリーズをぜひ楽しんでください。


今後の展望・活動予定

 直販のほかに割烹料理店やもつ鍋店、すし屋など、取引先を20店ほど増やす計画を立てていましたが、コロナ禍の影響で鍋を囲む機会が激減。地元大型百貨店などで取り扱っていただいていたものの、鍋の締め専用として開発した「すきしゃぶ麺」の売り上げは厳しいものがありました。コロナ禍が落ち着いたこれからが、販路拡大のチャンスと捉えています。
 冬でも素麺をおいしく食べることができる、別ゆでいらずでそのまま鍋に入れて食べられる、さらに食塩を使っていないので体に優しいというメリットを、消費者にもっとアピールしていきたいです。




INFORMATION




有限会社 井上製麺

代表取締役:井上 義博

住 所:佐賀県神埼市神埼町的1779

連絡先:TEL0952-52-2625/FAX0952-52-2628

U R L : 有限会社 井上製麺のwebサイトはこちら

資本金:1,000万円

設 立:昭和63年1月

従業員:12人

Saga Monodukuri /食料品製造業
平成30年度補正/ものづくり技術・一般型

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