山口産業株式会社
テントシートの縫製工場として創業し、その後は大規模なスポーツ施設から子ども用遊具までさまざまな膜構造の製造に取り組んできました。現在は帆布製品製造を主要事業とし、中でも中型・大型の膜構造建築物の製造販売に注力しています。顧客は運輸、製造、造船、プラントなど、風雨を防ぐ屋根を必要とするあらゆる業種業態。スタジアムの屋根、駅、空港など公共性の高い施設にも多く採用されています。設計から施工まで自社で一貫製造できる体制があり、顧客の要望を素早く実現できるのが強みです。
今回はシェード(日よけ)製品の開発製造を推進すべく設備を刷新し、生産性向上とシェア拡大を狙いました。
製造部 部長 山口信之
本事業への取り組みの経緯
これまで一貫生産により順調に業績を伸ばしてきましたが、東北復興需要の縮小や東京オリンピックの終了に伴い膜構造建築物の需要は衰退することが予測されていました。そこで次なる事業の柱としてシェード製品の製作に注力することにしたのです。近年の酷暑対策のためシェードの需要は高まっています。しかし日よけ商品を製造している企業は国内でも少なく、欧米メーカーからの輸入品が国内に多数出回っている状況が続いていました。当社におけるシェード製品製作環境を整備し、新たな製品を開発販売して海外商品の占有率を上回るために、このたび最新鋭の設備導入を決定した次第です。
実施内容(取り組みの詳細)
従来のシェード製作の課題として、日よけ製品で重要な生地の強度検査を目視のみで行っていた、生地を手作業で計測していた、幅継(生地同士をつなぐ作業)をミシンで行っていたということがありました。今回導入した卓上精密万能試験機AGS-Xおよびエグザモ600F USBは、生地の引張強度の検査に加えて最終製品段階での破壊検査もできるものです。また、検尺裁断機を導入して生地の計測を自動化しました。さらに懸架式ハイブリッド高周波ウェルダーも設置し、幅40mm、長さ1200mmまでの生地をミシンではなく溶着で幅継できるようになっています。
これらの機器を、今回新たに改修した北多久工場に設置し、稼働開始しました。
取り組み成果・波及効果
加工精度を飛躍的に向上させる革新的な取り組みにより、安定した製品の製造が可能となりました。従来は熟練工しかできなかった作業が自動化によって新人でもできるようになり、コスト面や人材育成の面でも大きな改善を実現できております。
技術的な課題を解決したことで導入から5年後には生産性を16%向上できる見込みが立ち、海外メーカーと対等に競争できる体制が構築されました。膜構造建築物で培ってきた特殊膜の加工技術および特殊形状に対応できる展開ソフトを生かし、あらゆる特殊形状のシェードに対応できております。お客様のご要望に応じたオーダーメイド製品展開も可能となりました。
事業所の魅力をさらに深掘り!
Q:御社について教えてください
A:膜構造建築物の製造販売を行う企業です。多久市に本社を置き、全国9カ所に営業所を展開しております。
Q:アピールしたい商品は
A:シェードセイルです。海外と比べて日本ではまだあまり浸透していませんが、当社では全国で10件以上の販売実績があります。
Q:御社の社是は?
A:「膜で街を未来を華やかに」。膜構造の提案・製造を通して、幅広い事業領域での課題解決に取り組みます。
Q:機械を導入してよかった点は?
A:作業効率が向上したことに加え、幅広い素材の溶着ができるようになったことです。
今回の事業でシェード製品製作工程を自動化しましたが、当社には未だ職人の技術に依存している工程もございます。受け継がれてきたものづくりの心を大切にしながら、さらなる品質と効率向上を追求すべくDX化を進めていきたいと考えております。
今後需要の拡大が見込まれるシェード製品の生産性アップと魅力ある商品開発を続けることで、当分野で国内シェアナンバー1、ゆくゆくは世界ナンバー1をめざす所存です。また、今後はアウトドアファニチャー分野への進出も検討しております。
テント製品の丈夫さ、汎用性の高さ、運搬のしやすさといった強みを広め、世の中のさまざまな課題解決への貢献をめざします。
INFORMATION
山口産業株式会社
代表者:山口篤樹
住 所:佐賀県多久市多久町3555-120
連絡先:TEL0952-74-2525/FAX0952-74-2527
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資本金:2,000万円
設 立:昭和51年12月
従業員:120人
平成29年度補正/ものづくり技術・一般型
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