天山酒造株式会社
明治8年、現在の場所で清酒製造業を始めたのが当社のルーツです。酒蔵の北西に位置する名峰・天山から湧く硬水を使用し、140年以上にわたり一貫した地酒造りにこだわってまいりました。主力商品は清酒「七田」です。圧倒的な歴史が培った経験と、季節雇用ではなく常時雇用である社員杜氏が生み出す繊細な味わいが強みで、フランスで開催された日本酒コンクールで最上位賞を獲得しました。原料である酒米「山田錦」は佐賀県産のものを積極的に使用し、地域農家活性化の一翼も担っております。今回の事業では、七田ブランドの競争力をより一層強化すべく生産プロセスを改善し、海外市場への販路開拓をめざします。
代表取締役 七田 謙介
本事業への取り組みの経緯
国内の日本酒出荷量は減少傾向ですが、高付加価値商品の出荷は年々増加しております。2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本の食文化の輸出が盛んになり、日本酒の輸出額は過去最高を記録しました。 こうした背景の中、当社は新市場として海外輸出への販路開拓をめざしております。高付加価値なブランド展開を行う場合、高い品質を維持したままで生産量を拡大する必要がありますが、現在の設備では限界があります。そのため、冷却・空気輸送設備への新たな投資および社員杜氏による生産工程の最適化に着手することにしました。
実施内容(取り組みの詳細)
今回導入した冷却・空気輸送設備は、蒸した米の温度を連続的に適性ラインまで下げるためのものです。従来の設備では水分量、温度、湿度の細かな調整ができず、蒸米の品質劣化につながるのがネックでした。新設備では、温風装置と冷風装置を駆使して蒸米の温度の正確なコントロールが可能となっております。温風蒸気を均一に当てることで、外側が硬く内側が柔らかい理想の状態に仕上げられるようにもなりました。また、外気温のコントロールも可能であり、外気温に左右されずに稼働できます。操作も容易であるため、作業者のスキルに依存せず、再現性の高い生産が実現できる環境となりました。
取り組み成果・波及効果
放冷工程の改善により、最高品質をめざすための原料処理が可能になりました。高付加価値化により単価アップの見通しも立っております。また、生産性が高まり、日本酒1000本の製造にかかる時間を約240分から約50分に短縮できました。さらに、従来3人だった当工程の必要人員が2人へ削減でき、余剰スタッフ1人を他工程に配置できるようになりました。電力費と労務費を7.5%削減できる見込みとなり、コスト削減による利益拡大が期待できます。 従来と比較し、高い品質の酒を短時間、低コストで製造できる環境が整備され、新市場開拓や販路拡大へと事業を進めていく体制が整いました。
事業所の魅力をさらに深掘り!
Q:御社が大切にしていることは
A:先代から受け継いだ「不易流行」の精神を重んじ、酒の文化を通して人々の心がより豊かで潤い多いものになるよう努めております。
Q:導入して良かった点は
A:機能面や生産性の向上はもちろん、安全面も改善され、人に優しい作業環境となったことです。
Q:新しく取り組もうとされていることはありますか
A:地元飲食店とのネットワークを生かし、小城市全体への経済効果の波及、地元の雇用拡大にも貢献したいと考えております。
Q:アピールしたいことは
A:佐賀県が選定するGXモデル企業2社のうち、1社に選ばれました。※GX=Green Transformationの略
私どもは2019年の豪雨で浸水被害に遭ったことをきっかけに、環境保護についての思いを強くいたしました。今後の酒造りにおいてエネルギーの消費をできるだけ抑え、その成果を可視化していく所存です。重油を用いて米を蒸す際に排出されるCO2に関しても削減をめざすほか、重油をプロパンガスに変えるといったエネルギーの転換も検討します。 現在、当社近くにある江里山地区の棚田で酒米造りに取り組んでいますが、素晴らしい棚田のある環境を守っていくとともに、江里山の米のみを使ったオリジナル商品を開発するなどブランディングにもつなげていきたいと考えております。
INFORMATION
天山酒造株式会社
代表取締役:七田 謙介
住 所:佐賀県小城市小城町岩蔵1520
連絡先:TEL0952-73-3141/FAX0952-72-7695
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資本金:1,800万円
設 立:昭和34年8月(1875年創業)
従業員:27人
平成29年度補正/ものづくり技術・一般型